
1950年代に本格的に着手されて以降、何度かのブームを経て、80年代後半から長い停滞期に入っていたと言われる人工知能(AI)研究ですが、近年、インターネットの爆発的な普及による大量のデータ、いわゆるビッグデータを用いた機械学習技術(中でもディープラーニングと呼ばれる技術)が急速に発展しており、産業への利用が進んでいます。人工知能やAIという言葉は、もはや映画や小説の中の話でなく、ビジネスのニュースの中で頻繁に耳にするようになりました。(ややバズワード化し、乱用されている感もありますが。)
人工知能を用いることによって、大量のデータから個人や集団(クラスター)のニーズを特定することができるため、特にマーケティングとの相性は非常に良いのですが、今回のコラムではその中でも、CRO(コンバージョン・レート最適化)と人工知能の関係について、書かせていただきたいと思います。
CROにおける人工知能の活用の方向性として、既に取り組みが始まっているものに限っても、大きく4つ挙げられるかと思います。それぞれについて、以下に記載したいと思います。
(1) インターネット上やサイト内での行動などから、各ユーザーの属性・傾向を判別/推定する
DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)と呼ばれるサービスが、そういったことを既に実現しています。海外ではBlueKai、国内ではIntimate Mergerなどが有名です。弊社でも、DMPとDLPO(ABテスト&最適化ツール)を連携させることで、新規ユーザーに対して属性ごとに最適なクリエイティブを表示する、といった施策を実施させていただくケースが増えてきました。
(2) サイト上の課題箇所を発見し、改善策を提案する
Google Analyticsなどの解析ツールと連携することで、サイト内でどのページに課題があるのかを、人工知能が定量的に分析します。国内でもwacul社の「AIアナリスト」などがサービス提供を開始しています。現時点ではまだ、ページ単位での大まかな課題や改善案の提示にとどまりますが、今後、より精度が上がり、パーツ/コンテンツ単位の課題発見や、それらに対する具体的な改善案の提示が可能になってくると考えられます。

(3) ユーザーごとに最適なクリエイティブやページ構成を発見し、最適化する
予め登録したクリエイティブやページ構成の中で、ユーザー属性ごとにどのパターンが最適か、を人工知能が導き出します。国内ではDLPO、海外ではAdobe Targetなどのツールが有名です。現時点では、特定のページ内における最適化に使用していますが、今後、サイト構成すらもユーザーごとに動的に最適化できるようになっていくと考えています。
(4) ユーザーに見せるクリエイティブ自体を人工知能が考える
ニューヨークに本拠を置くPersado社は、 キャッチコピーや文章の作成を自動化するプラットフォームを開発しました。彼らは50万の文章を8年掛けてデータベース化し、さらに2年掛けてプログラム開発したそうです。Persadoのシステムが自動執筆したキャッチコピーは、人間のコピーライターが書いたものよりも、なんと95%の確率で効果が高いという結果も出ています。人工知能はデータを与えれば与えるほど精度が高まっていくため、この勝率はさらに改善していくでしょう。現在は日本語には未対応のようですが、今後、日本語にも対応したサービスが出てくると考えられます。
以上、今回のコラムは、「人工知能とCRO」というテーマでお届けしました。我々人間としては、人工知能を恐れるのでなく賢く活用し、(少なくとも当分の間は)人間にしかできない、よりクリエイティブな仕事にフォーカスしていくことが求められると思います。
